平成28年から令和7年の出題傾向と比較し、令和8年度の化学分野で初めて(あるいはこの期間には見られなかった切り口で)出題された主な内容は、「実社会や環境保全における中和反応の具体的な応用」です。
これまでの入試では、実験室でのビーカーを用いた中和反応やイオンのモデル、計算問題が中心でしたが、令和8年度は以下のテーマが新たに導入されました。
1. 缶詰のみかんの加工(薄皮を取り除く工程)
中和反応を食品加工の現場に関連づけた問題が登場しました。
• 内容: 外皮をむいたみかんを、酸性のうすい塩酸に浸して薄皮を溶かした後、アルカリ性の水酸化ナトリウム水溶液で中和して、安全に食べられる状態にする工程が題材となりました。
• 特徴: 単なる酸とアルカリの反応としてだけでなく、工業的な「みかんの薄皮むき」という具体的な実例の中で、化学反応式()や中和の仕組みを答えさせています。
2. 河川の中和処理による水質改善
実験室を飛び出し、環境保護の仕組みとしての化学変化が問われました。
• 内容: 酸性の水が湧き出している河川の上流に中和処理施設を建設し、石灰石を加えて酸性を弱める(中和する)ことで、下流で魚などの水生生物が生息できる環境を作る仕組みについての問題です。
• 特徴: 酸性の川(pH1.2などの極端な例)を石灰石で処理し、水質改善を行うという大規模な環境保全の視点からの出題は、過去の出典には見られない新しい傾向です。
3. 特徴的なその他の出題
その他の小問や大問でも、基本的な知識を実生活や実験の注意点に結びつける問いが見られました。
• アンモニアの噴水実験と性質: アンモニアが水に非常によく溶ける性質を利用した「赤色の噴水」の仕組み自体は定番ですが、令和8年度では実験図に基づき、その気体名称を直接記述させています。
• 二酸化炭素の発生方法の再確認: 炭酸水素ナトリウムの加熱で発生する気体と同じものを、別の方法(石灰石と塩酸)で発生させる選択肢を選ぶなど、複数の実験を結びつける力が試されました。
令和8年度の化学分野は、過去10年間に繰り返し出題されてきた「中和」や「気体の性質」といった基本原理を維持しつつも、「私たちの生活(食)や地球環境(河川)の中で化学がどう役立っているか」という、より実践的で探究的な文脈での出題が初めて本格的に行われたのが大きな特徴です。