令和8年度の地理分野を過去10年間(平成28年〜令和7年)の出題内容と比較すると、出題の形式や大きなテーマは継承しつつも、特定の地域事例や最新の技術・社会動向を反映した内容が初めて、あるいは非常に新鮮な形で登場しています。
具体的に「初めて(あるいは過去10年で目立った新傾向として)」出題された主な内容は以下の通りです。
1. 最新技術の導入:スマート農業
• 内容: 人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)、ロボット技術を活用した「スマート農業」が、地域調査の大きなテーマとして取り上げられました。
• 具体例: ドローンによる自動農薬散布や、遠隔操作による水管理が、高齢化や後継者不足といった農業の課題を解決する手段として紹介されています。過去の入試では「促成栽培」などの伝統的な工夫が主でしたが、最先端技術による効率化が問われたのは大きな特徴です。
2. 特定の地場産業の背景:鯖江市の眼鏡フレーム
• 内容: 福井県鯖江市の地場産業である「眼鏡フレーム」が、地域の自然環境と結びつけて出題されました。
• ポイント: 北陸地方の冬は雪におおわれる期間が長いため、屋内で作業できる産業が発達したという背景を、国内生産量の約90%を占めるという統計と共に分析させています。過去の北陸関連の問題では「稲作」や「伝統工芸(漆器など)」が中心であったため、この事例は新鮮です。
3. 地域間の移動分析:近畿地方の通勤・通学
• 内容: RESAS(地域経済分析システム)通勤・通学者数の流動が詳しく問われました。
• 特色: 過去には東京23区への通勤問題(令和3年)がありましたが、近畿地方に特化した都道府県間の具体的な移動データ(例:三重県からは愛知県への移動が多いなど)を読み取らせる問題は、この期間の入試では新しい焦点です。
4. 法的・社会的位置付け:アイヌ文化と先住民族
• 内容: 北海道の地域調査において、アイヌの人々が受け継いできた伝統文化(衣服「アトゥシ」など)を紹介しつつ、彼らが「先住民族として法的に位置付けられた」という現代的な視点が含まれています。
• 変化: 過去の入試でも北方領土や北海道の自然は出題されてきましたが、先住民族としての権利や誇りが尊重される社会の実現という、最新の社会情勢を反映した記述が目立ちます。
5. 特定の気候区と栽培法:タンザニアと電照菊
• 世界地理(タンザニア): 過去にエジプトやケニアの出題はありましたが、タンザニア(ダルエスサラーム)の雨温図を用い、サバナ気候における「雨季と乾季」の明瞭な差を具体的に記述させる問題が登場しました。
• 日本地理(電照菊): 愛知県の産業として「菊の電照栽培」が取り上げられました。日照時間を長くすることで「開花時期を遅らせる」という具体的な仕組みを、図や資料から説明させる設問になっています。
これらの内容は、従来の「知識の暗記」から、「統計資料を基に現代社会の課題や技術革新を読み解く力」をより重視する入試の変化を象徴しています。